ウインドキャラバン アオテアロア(NZ) 本物の風に出会う

ニュージーランドでのウインドキャラバンは、穏やかだった6月の三田とは打って変わって、ハウラキ湾に強風の吹き荒れる、壮絶なものとなった。私は、この無人島で生まれて初めて本物の風に出会った気がした。
モトゥコレア(ブラウンズ島)は、オーランド沖12キロに浮かぶ、直径800メートル程の、緑の草に覆われた小さな島だ。蛇も動物も居ないので、ミヤコドリ、ニュージーランドチドリ、プケコ、その他様々な珍しい鳥たちの楽園である。環境庁の厳しい管理のもとに保護されているが、幸いウインドキャラバンをやらせて頂く許可を得ることが出来た。
ヘリコプターによる島への運搬、風車小屋や作品の設置と、最初の2、3日は全てが順調に進んでいたが、その後西風が急に強くなり始めた。11月2日の朝、脚立の上で風車の羽根を外そうとしていた私は、突風によって羽根ごと飛ばされ、地面に叩き付けられた。背骨を痛めて緊急入院したものの、幸い大事に至らず、3日程で退院することが出来た。この強風で作品のセールにもかなりの被害が出たが、世界一の「セールの町」に居たお陰で、各部の強化を含めて万全の修理をすることが出来た。そんな訳で、オープニングは予定より一週間遅れることになった。
11月11日の土曜日のオープニングは、幸いにも穏やかな絶好の天候に恵まれた。セレモニーは、グレンドウイ・ボーティング・クラブの子供たちによる、島へのヨットのパレードによって始まった。21艘のヨットのセールは、オラケイ小学校の生徒200人が参加したデザインコンクールの中から選ばれ、特別に製作された。カラフルで大胆な図柄のセールが島に近づいてくるのは、正に圧巻だった。
その日、島には約350人の子供や大人が集まった。モトゥコレアはマオリの聖地なので、その歴史的な場所を皆で巡る散策が行われた。マオリの一部族のリーダーである ピタ・トゥレイが、皆を案内し、マオリの歴史とウインドキャラバンの精神について 話をした。会場に戻って、参加者全員に巻寿司が振る舞われた。これは、日本のウインドキャラバン三田の会場で地元の子供たちが植え、収穫をした米で作ったものだ。草の上に座って、皆で一つの大きな家族のように、島の自然を心ゆくまで満喫した。
ヨット、カヌー、ボート、水上タクシーやヘリコプターに至るまで様々な乗り物で多くの人々が島を訪れたのは、最初の2、3日だけで、週の後半は嵐の様な天候が続いた。最終日の11月19日には、オークランドでも15年振りという強風が吹き荒れ、秒速30メートルを記録した。この週末に島を訪れたのは、ずぶ濡れでカヤックを漕いできた勇気ある父子だけだった。
その間風車は、常に消費しきれない程の電力を発電し続けた。悪天候にもかかわらず、マオリの人々は交代で、我々と一緒に島に泊まってくれた。お陰で多くの貴重なことを彼等から学ぶことが出来、島を後にする頃には彼等との間に強いきずなが生まれていた。
2000年11月30日
新宮 晋